ニュースリリース

2024年5月 9日

障害者差別解消法の改正施行日に、オストメイトのための日帰り温泉ツアーを催行しました

入浴用シール使用で大浴場も気兼ねなく。参加者9割が温泉入浴に自信、外出や旅を楽しむきっかけに!

アルケア株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役社長:伊藤 克己、以下「アルケア」)は、近畿日本ツーリスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:瓜生 修一、以下「近畿日本ツーリスト」)と連携し、オストメイト※1のための日帰り温泉ツアー(以下、本ツアー)を障害者差別解消法の改正施行日である202441日に実施したことをお知らせいたします。

アルケアは、創業以来「親切な製品をつくること」を志し、ケアをする人・ケアを受ける人の潜在的なニーズを察知して磨き抜かれた製品・情報・サービスを提供し、ケアの可能性を豊かにしていく「ベストケア」創造企業です。アルケアのストーマ領域では、国産初かつ唯一のストーマ装具メーカーとして、「オストメイトと共に歩み、自分らしいあしたを実現する」というミッションの実現を目指し、ストーマケアで必要とするストーマ装具※2だけでなく、日常生活をサポートする製品やサービスをカタチにして事業を展開しています。

温泉ツアー集合写真


※1 さまざまな病気や事故などにより、お腹に排泄のための「ストーマ(人工肛門・ 人工膀胱)」を造設した人
※2 ストーマから排出された排泄物や分泌物を溜める専用の装具のことで、ストーマ装具は排泄物を溜めておくストーマ袋(パウチ)と、ストーマ袋をお腹に粘着させる面板から構成されている

ツアー催行の背景

オストメイトは国内に約23万人いらっしゃいます。身体内部の機能に障害がある内部障害に該当し、排泄管理のために、入浴や就寝時などを含めて常にお腹にストーマ装具を装着する必要があります。ストーマ(人工肛門・人工膀胱)は腹部に位置するため、外見だけではオストメイトであることは分かりません。外見からは分かりづらく、排泄に関わるセンシティブなことでもあるため、ご自身がオストメイトであることを周囲に伝えない場合もあります。このような背景から、オストメイトについての社会的認知が進んでおらず、周囲の理解が十分に進んでいない課題があります。
一例として、適切にストーマ装具を装着していれば排泄物が漏れることはありませんが、オストメイトが温泉などの公共入浴施設にて入浴拒否をされたという報道もあります。これらは、社会的認知と理解の不足によるものですが、一部のオストメイトの方々が旅行や公共の場での入浴に後ろ向きになっている要因にもなっており、アルケアの発行するオストメイト向け無料情報誌「向日葵(ひまわり)」が実施したアンケート※3では、80%以上の方が「温泉に行かなくなった」と回答しています。「日常生活の困りごと」に関するアンケート※4でも、「入浴」は第2位になっており、「特集記事として読んでみたいと思うテーマ」に関するアンケート※5では、「温泉や大浴場の入り方」が第2位に挙がりました。さらに、第9回オストメイト生活実態基本調査報告書※6によると、オストメイトの公衆浴場や旅館・ホテルにおける大浴場の利用状況について、65.3%が利用しないと回答しており、その理由としては「他人の目が気になる」「他の人の迷惑になるのを避けたい」「装具交換等が面倒である」「入浴を断られた」などが挙げられています。このような中、41日に障害者差別解消法が改正施行され、事業者※7にも障害のある人への障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止し、障害のある人から申し出があった場合に「合理的配慮の提供」が義務化されました。これらの課題や背景を受け、オストメイトの方々に安心して旅や温泉を楽しめるきっかけ作りと、旅館など宿泊業に携わる方々を含む社会に対してオストメイトに関する理解促進を目的として企画・催行に至りました。

※3 調査方法:オストメイト向け無料情報誌「向日葵」内のアンケート用はがき、調査期間:202310月~20241月、調査対象:オストメイト向け無料情報誌「向日葵」購読者(N=781・複数回答)
※4 調査方法:オストメイト向け無料情報誌「向日葵」内のアンケート用はがき、調査期間:20208月~10月、調査対象:オストメイト向け無料情報誌「向日葵」購読者(N=734・複数回答)
※5 調査方法:オストメイト向け無料情報誌「向日葵」内のアンケート用はがき、調査期間:20223月~7月、調査対象:オストメイト向け無料情報誌「向日葵」購読者(N=942・複数回答)
※6 出典:オストメイトの生活と福祉(令和411月) 公衆浴場や旅館・ホテルにおける大浴場の利用状況(N=3,930・複数回答)
※7 商業その他の事業を行う企業や団体、店舗であり、目的の営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同じサービス等を反復継続する意思をもって行う者。 個人事業主やボランティア活動をするグループなども「事業者」に入る。

ツアー催行の結果

ツアー当日は、40代~90代の12名のオストメイトとそのご家族など関係者の方々含む合計16名の方にご参加いただきました。
1.温泉施設でのゆったり入浴
アルケアのオストミーケア事業本部と皮膚・排泄ケア認定看護師の社員がサポートに入り、安心して龍宮城スパ・ホテル三日月の広大なスペースにある複数の温泉施設を満喫いただきました。さらに、ストーマ装具を覆うアルケア製品の入浴用シール〈バスラック®シール〉のモニター体験もあり、他人の目を気にせず気兼ねなく入浴をお楽しみいただくことができました。

大浴場での入浴の様子

大浴場での入浴を満喫

ストーマ装具を覆う入浴用シールの使用方法を説明するアルケア社員と参加者の画像

ストーマ装具を覆う入浴用シールの使用方法を説明するアルケア社員と参加者

オストメイトの快適な入浴をサポートする、目隠し機能と防水機能を備えた入浴用シール〈バスラックシール〉

・商品特長
「入浴時にストーマ装具を濡らさない」「ストーマ装具を目立たせない」というニーズに応えるため、「錯視効果」に着眼。視覚情報処理研究で著名な東京大学大学院 四本 裕子教授による錯視デザイン監修の元、最もストーマ装具の凹凸を目立たせない「まだら模様」にこだわり商品開発しました。
・活用事例
令和6年能登半島地震の被災地において、金沢市のストーマ装具販売店を通じて〈バスラックシール〉の提供要請があり、無償提供しました。断水が続く中で元日から入浴できていなかった被災地のオストメイトの方々が〈バスラックシール〉を使用して仮設の風呂や公衆浴場で入浴し、「お風呂に入れて安心した」「入浴用シールがあるから気兼ねなくお風呂に浸かりましょう、と役場の方から声を掛けていただき感激して涙が出た」などのお喜びの声をストーマ装具販売店の担当者様からご共有いただきました。

様々なデザインを検討し、最も凹凸が目立たなかったまだら模様を採用

バスラックシール装着前/装着後

2.ストーマ装具工場見学と災害対策についての講義
温泉を満喫した後は、アルケアの工場(千葉市)にてストーマ装具の製造工程見学と講義を実施しました。厳しい品質管理や耐水圧検査の様子の見学、そしてストーマ装具の製造体験にも挑戦し、完成品にシールを貼ったりイラストを描いたりと思い思いにデコレーションを施しました。また、「オストメイトのための災害対策」として、日頃から準備しておくと安心な備えや避難場所での対策についてオストミーケア事業本部 CX企画グループの神藤 貴徳がレクチャーを行いました。

工場見学の様子
ストーマ装具へのデコレーション(デコパウチ作成)画像
オストメイトのための災害対策レクチャーの様子

3.参加者の声
温泉入浴について
・普段は貸し切りのお風呂を利用することが多く、オストメイトになってから大浴場での入浴は初めて。今回は、大浴場で参加者の皆さんとお話ししながら、体だけでなく心も温まった。入浴用シールはなかなか良いものが見つからなかったが、〈バスラックシール〉を使ってとても快適でした。(40代 女性)
・〈バスラックシール〉は、温水の中で剥がれることなく安心して大きな浴槽に長く浸かることができたのがとても良かったです。他の人から目立つこともないと思うので、これから泊まり旅行にも行きやすくなると思います。私には少し大きめで、サイズが2種類あるともっと良いですね。(60代 女性)
アルケア工場見学について
・毎日使用しているストーマ装具がどのように作られているか知ることができ、嬉しく思います。(60代 男性)
・ストーマ用の袋は5層構造になっているなど、多くの工夫にとても感動しました。(70代 男性)


4.本ツアーを共同企画した近畿日本ツーリスト担当者の声
バリアフリーが進んでいる社会でも、内部障害のある方に対する認知度が他の障害に比べて低い現状があると考えています。障害がある方でも、誰もが安心して旅を楽しめる社会をつくれるように尽力していきたいです。
(近畿日本ツーリスト株式会社 事業推進本部・営業企画 ユニバーサルツーリズム推進担当 伴流 高志氏)

5.催行結果のまとめ
本ツアー後のアンケート※8 で、参加者の90%が「外出や旅行、温泉に出かける自信がついた」と回答し、外出や旅を楽しむきっかけとしていただけました。一方で、「オストメイトについて、社会的に広く認知・理解されていると思うか」という問いに対しては、80%近くが「認知されていない」と回答する結果となりました。参加した70代の男性は、オストメイトが安心して生活するために社会的にどのような理解や対応があるとよいかについて、「私自身がそうだったように、自分の身にならないとなかなか分からないと思うけれど、今は多様性の時代。だから、私が積極的にスポーツをしたり、温泉に出かけたりすることで、オストメイトについて知ってもらえたら良いと思ったので、このツアーをきっかけに一歩踏み出していきたい」と笑顔で語ってくださいました。
アルケアは、今後もオストメイトが外出や温泉などの公衆浴場での入浴に一歩を踏み出すための支援やきっかけ作りをするとともに、オストメイトの社会的認知向上・理解促進に継続して取り組み、誰もが自分らしく生活できる社会の実現に貢献してまいります。

8 調査方法:オフライン調査、調査期間: 20244月、調査対象:ツアー参加者のオストメイト(N=12・単一回答)

オストメイトと共に歩み、自分らしいあしたを実現する

アルケアは、1965年に国立がんセンターの看護婦長(当時)からの要請により国産初のストーマ装具「ラパック」を開発しました。そこから約60年、オストメイトがストーマケアで必要とするストーマ装具だけでなく、ストーマ造設前と変わらない日常生活を送っていただくためのケア用品や生活支援用品(肌着や入浴用品など)のラインアップの拡充やストーマのある生活に役立つ情報・サービスの提供の強化を図っております。
「オストメイトの方に、生涯にわたって自由に安心して生活を送っていただきたい」という想いから、アルケアのストーマ領域では、あらたに「オストメイトと共に歩み、自分らしいあしたを実現する」をミッションに掲げました。オストメイトは、がんを含めたさまざまな病気や事故などによるストーマ造設とともに、ストーマのある生活をスタートします。同時に、それはオストメイトのご家族にとってもストーマのある生活が始まることを意味します。ストーマケアに関わる医療従事者、ストーマ装具販売店、そして私たちメーカーもそれぞれの立場からそれぞれの「ストーマのある生活」に深く関わり寄り添っていきます。
アルケアは、オストメイトと共に歩むことを通じて「今日よりも、明日をよくしたいと思っているケアをする人とケアを受ける人」を支えられるよう、製品・情報・サービスを研ぎ澄まし、ストーマに関わる全ての人が自分らしくいられる社会の実現を目指します。

アルケア株式会社について

1953年に国産初の石膏ギプス包帯「スピードギプス」の開発・製造に成功し、1955年に創業しました。ケアをする人・ケアを受ける人の双方にとって「親切な製品をつくる」という創業当時の想いはそのままに、現在は予防から社会復帰にいたるまで、ケアをプロセス視点で捉え、整形外科領域、褥瘡・創傷領域、ストーマ領域、看護領域の4つの専門領域で事業を展開しています。「ケアすることの可能性をもっと豊かに。ケアを受けることをもっと前向きに。」アルケアは、そんな明日の形を見据えて、磨きぬいた製品や情報、サービスを社会の隅々にまで広げてゆきます。また、2015年からパラアスリートを雇用し、デュアルキャリア(競技と仕事の両立)を実現できるようサポートしています。未来を担う子どもたちなどに向けて、全国でパラアスリートによる講演活動を継続し、誰もが自分らしく健やかに生きられる医療福祉社会の実現を目指しています。(令和4年度第2期 心のバリアフリーサポート登録企業および令和5年度東京都「心のバリアフリー」好事例企業

別紙参考資料
調査名称:オストメイトのための温泉日帰りツアー参加者アンケート
調査方法:オフライン調査
調査対象:ツアー参加者のオストメイト 12名(男女40代~90代)

オストメイト温泉ツアーアンケート結果グラフ