ストーマなんでも相談室

公開日:

退院後のストーマ周囲の変化と対応について

退院後の生活で、ストーマにはどのような変化や影響がありますか?また、変化に対する工夫や注意点を教えてください。

ストーマを造設してしばらくすると、少しずつストーマ自体の腫れが引いてきて、ストーマのサイズが落ち着いてきます。フリーカットタイプの面板を使っている場合、交換時に皮膚やストーマ粘膜を傷つけないように、面板に開ける孔はストーマより1~2mm大きく切ると良いでしょう。それ以上面板を大きく切ると、排泄物が皮膚に触れる部分が増え、皮膚トラブルを起こしやすくなります。逆に面板の切り方が小さすぎると、面板を貼るときにストーマの粘膜にかぶってしまい、面板の下に排泄物が潜り込みやすくなって、漏れの原因になりますので注意してください。

次に、身体の変化、季節の変化、生活の変化の3つの視点からご説明します。

身体の変化としては、手術前後に体重が減ってしまった患者さんでも、しっかりと食事がとれるようになるとつい食べ過ぎてしまい、体重が増える方も少なくありません。体重が増加して体型が変わることで、皮膚がやわらかくなってたるむ、腹壁が前に出て厚くなるなどの変化が起こります。その結果、お腹がストーマの上にかぶさったり、ストーマ周辺の皮膚にしわやくぼみが発生したりすることがあります。このような変化は、排泄物の漏れや装具の剥がれやすさにつながりますので、気になるときにはストーマ外来を受診してください。

装具を剥がすときの刺激も皮膚トラブルの原因になりますので、ストーマ周囲は普段から優しくケアをすることが大切です。装具の交換に慣れ、つい力任せに剥がしてしまうと、刺激によって皮膚を傷めることがあるので注意しましょう。ストーマ周囲の皮膚は洗浄剤などで優しく洗い、きれいに洗い流して清潔にしておくことがポイントです。

季節の変化としては、空気が乾燥する冬には皮膚の乾燥にも注意が必要です。皮膚が乾燥すると、ストーマ周辺に皮膚トラブルが発生しやすくなります。逆に、皮膚にうるおいがあることは皮膚トラブルの予防につながりますので、保湿剤や、保湿成分が入った洗浄剤や入浴剤を使うなどして、うるおいを保つことを心がけましょう。

一方で、夏は汗をかきやすくなります。汗の量が増えると面板が多くの汗を吸って長持ちしづらくなるため、いつもより早めに装具を交換すると良いでしょう。早めに交換することで装具の購入費用が増えることが気になる方は、短期交換タイプの装具を使うのもひとつの方法です。

生活の変化では、激しい運動や力仕事をすると大量の汗をかきますので、事前に装具を新しいものに交換して皮膚に十分密着したことを確認してから活動したり、密着性を高める装具固定用のベルトを使用したりすると安心です。最近は面板の周りにテープを貼って固定する患者さんも増えているので、ストーマケア専用のテープの使用をおすすめしています。

ストーマ周囲の変化に早めに気づくためのポイントはありますか?

ストーマ周囲の変化は、「装具を貼ったときや服を着た際に違和感がある」、「ズボンのベルトが、以前よりもきつく感じる」、「装具が剥がれやすくなった」など、日常のちょっとした感覚として自覚されることが多いようです。そのため、「いつもと何か違うな…」と感じたら、手術をした病院やかかりつけのストーマ外来に気軽に相談してください。また定期的に自分の体重を測って記録したり、ストーマの状態を写真で記録したりしておくと、変化に早く気づくことができるでしょう。

最近、ストーマの周りが膨らんできたのですが、大丈夫でしょうか?

ストーマ周囲のお腹が膨らんでくるのは、「傍ストーマヘルニア」のサインかもしれません。傍ストーマヘルニアとは、肥満、加齢などが原因でお腹の筋肉が緩んでしまい、腸が腹腔から押し出されてストーマ周囲の腹壁が膨らんでくる状態のことです。ストーマ周囲の皮膚が、ストーマのある位置と反対側のお腹に比べて膨らんできたな、お腹の膨らみ具合が左右対称ではないなと感じたら、傍ストーマヘルニアの可能性があります。

傍ストーマヘルニアのイメージ

傍ストーマヘルニアのイメージ

傍ストーマヘルニアは急激になるものではなく、数ヶ月~1年以上の時間をかけて少しずつ進行します。ヘルニアが進行してお腹が膨らんでくると、装具が密着しにくくなり、排泄物の漏れが生じることがあります。また凸面装具を使っている場合、腹壁と装具の凸面が反発してしまい、装具の適切な密着が得にくくなります。このため装具が貼りづらくなったり、排泄物が漏れたりするなどの変化も、初期の傍ストーマヘルニアのサインになります。

傍ストーマヘルニアを早期に発見するため、これらのサインに気づいたら、できるだけ早めに手術をした病院やストーマ外来を受診してください。

予防には、重いものを持ち上げたりお腹に力を入れたりするような動作をなるべく避け、早めにヘルニアベルトをつけると良いでしょう。

最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします!

オストメイトの皆さんには、ストーマ外来での定期的な受診を続けてほしいと思います。ストーマ外来は、皆さんが何か気になることがあれば、いつでも気軽に相談に来ていただける場所です。また、ストーマ外来で私たち専門職が診ることで、ご本人が気づかない小さな変化にも気づくことができ、トラブルを未然に防ぐことができます。トラブルが起きてからではなく、起きる前に相談していただき、適切な対処をすることで、日常生活での楽しみも広がるのではないでしょうか。

ストーマ外来受診の様子(黒木先生提供)

ストーマ外来受診の様子(黒木先生提供)

外出や旅行、運動、お仕事などについても、ストーマがあるから、ヘルニアが心配だからと、すべてを制限することはありません。私たち専門職に相談していただければ、その人に合った装具や生活の工夫を提案することができます。一人で悩まず、もっと気軽にストーマ外来を受診してもらえればうれしいですね。

(発行:2025年9月)

執筆者の皮膚・排泄ケア特定認定看護師 黒木 さつき 先生

稲沢市民病院
皮膚・排泄ケア特定認定看護師

黒木 さつき 先生

問い合わせをする

どんな些細なことでも構いません。
お気軽にお問い合わせください。

※医師の診断を要するような健康相談・治療内容に関するお問い合わせにはお応えいたしかねます
かかりつけ医にご相談ください。

お客様相談室

お電話で
フリーダイヤル 0120-770-175
午前9:00〜午後5:30 (土・日・祝日を除く)