監 修
川崎医科大学総合医療センター
野田 知之 先生
1. ギプスが“水に濡れてしまう”
日常生活でギプスが
濡れてしまいます。
ギプスを濡らしては
いけないのでしょうか?
ギプスを濡らしてしまうと「ムレ」「におい」の原因になるばかりではなく、「かぶれ」や「潰瘍(かいよう)」など皮膚障害が起こりやすくなります。
特に多いのが、シャワーを浴びたり、水仕事をしたり、顔を洗うときなどの水濡れです。ギプスが濡れないように対策をしましょう!
ギプスの水濡れへの対処方法
入浴のとき
ポリ袋にギプスごと手や足を全部入れて、入口を大きめの輪ゴムで軽く固定しましょう。ただし湯船に浸かることはやめてください。
長時間のシャワー浴は汗をかいて、あとでかゆくなる原因となりますので、短時間のシャワーで済ませるとよいです。
ギプス専用のカバーを使うと簡単に水濡れ対策ができておすすめです。
水仕事や洗顔などのとき
ポリ袋でギプスごと指先から腕を覆い、ズレ落ちないように輪ゴムなどで軽く固定しましょう。
濡れてしまったら
水分をタオルで拭き取り、ドライヤーで乾かしましょう。その際は温風の使用は避けるなど火傷に注意してください。
2. ギプスの“汚れや見た目”が
気になる
外出するとギプスが
汚れるので困っています。
汚れたギプスのまま
家の中で過ごしたくない
のですが…
ギプスが汚れてしまっても洗えないので困りますよね。ギプスを覆い隠すなどの工夫をしてできるだけ汚れを防ぐのがよいでしょう。
ギプスの汚れや見た目への
対処方法
外出のとき
普段履いている靴が履けない場合には、外出時の汚れを防ぐため、大きなサイズのズレにくいサンダルなどを準備するとよいでしょう。
ギプスの保護や歩きやすさ、見た目なども考慮されたギプス専用の靴やサンダルなどがあると安心です。雨の日でも濡れにくい防水タイプもあります。
腕のギプスの場合はこまめに三角巾を取り換えるか、汚れが目立ちにくく扱いやすい専用の腕つり(サスペンダー)を用意すると便利です。
室内時
ギプスは固い素材のため、床や寝具などを傷つける可能性があります。また、外での汚れで室内を汚さないためにも、室内用のスリッパやシューズカバー、大きめの靴下などを活用するとよいでしょう。
医療スタッフに相談の上、固定の妨げにならない範囲で、ギプスの上から包帯やテープなどを巻いてもらうのもひとつの方法です。
ギプスが汚れてしまったら
ギプスが汚れた場合は、水で濡らし固く絞った布を使って汚れた部分を拭きましょう。アルコールを含まないウェットティッシュで軽く拭くのもよいです。その際にはギプスの中を濡らさないように注意が必要です。
3. ギプス固定中の
“におい”が気になる
ギプスをずっとつけて
いると、嫌なにおいが
して恥ずかしいし、
不快に感じます。どうにか
できないのでしょうか?
長時間ギプスを装着していると、どうしてもにおいが発生してしまいます。
においの原因と対策について解説しましょう。
においの原因
ギプスの内部は長期間洗えないため、体から発する汗や老廃物(ろうはいぶつ)による雑菌の繁殖により不快なにおいが発生します。
においへの対処方法
ギプスの中は拭くことができませんが、触れられる範囲は身体を拭くためのシートなどを使って清潔にしましょう。
消臭スプレーは、ギプス内の皮膚トラブルやギプス本体に影響する可能性があるため使用を避けましょう。また、場合によってはにおいが悪化することもあります。
においが強く気になる場合は、衣服や布などで覆うのもよいでしょう。
ギプス内の汗対策として、ギプスの中の風通しをよくして、できるだけ乾いた状態を保ちましょう。
ドライヤーの冷風で通気させるのもひとつの方法です。
4. ギプス固定していると
“かゆくなる”
ギプス内がかゆくて
たまらないです。
かきたいのにかけない…
どうにかできない
でしょうか?
ギプス内のかゆみはギプス内の「ムレ」や「皮膚刺激」が原因です。
かゆみのメカニズムと対策をご紹介します。
かゆみの発生原因
ギプスを装着している部分は密閉空間なので、温度や湿度が高まり、汗をかいて皮膚がムレ、かゆくなることがあります。
浮腫み(むくみ)などでギプスと触れることが増え、こすれてしまうことも、かゆみが強くなる原因です。
かゆみの対処方法
我慢できないほどの強いかゆみの場合は、まずは医師に相談しましょう。
ギプスの隙間から棒などを入れて直接かく行為は、ギプス中の皮膚に傷をつくる原因となり、余計にかゆくなることもあるためやめましょう。
外から触れられる部分は、身体を拭くためのシートなどを使って清潔にしましょう。
冷やすことでかゆみをおさえることができます。クーラーの下やアイシングパックなどでギプスの上から冷やすとよいでしょう。
ギプスの中の風通しをよくして乾いた状態を保ち、なるべくムレないようにしましょう。
5. ギプス装着時の“歩き方”
ギプスを装着していると、
正しい歩き方が
わからなかったり、
普段の靴が履け
なかったりして困る
ことがあります。
下肢の骨折(足の骨折)では骨折した場所によって治療期間がことなり、治療の段階によって歩き方も変わります。ここではその一部をご紹介します。
ギプス装着時の歩き方
注意:ギプス装着時の歩行の可否、荷重量(許可された体重をかける量)については必ず医師の指示に従ってください。
注意点
脇の下には血管や神経が通っているため、松葉杖にもたれたり直接腋窩(わきの下)が当たらないように注意してください。
松葉杖を使った歩行
松葉杖は骨折した足に体重をかけることが難しい時期に、体重支持や補助として使用します。
完全免荷歩行 | 患側(痛い足)に一切の体重をかけない歩き方
1. 患側(痛い足)を浮かせたまま両方の松葉杖を前に出す。
2. 両上肢(両腕)で体重を支えながら健側(元気な足)を前に出す。
*患側(痛い足)は地面につけずに、両方の松葉杖で体を持ち上げるように移動します。
部分体重歩行 | 患側(痛い足)に体重をかけた歩き方〈医師の許可した範囲内で体重をかけます〉
1. 患側(痛い足)と両方の松葉杖を同時に前に出す。
2. 患側(痛い足)と両松葉杖で体重を支えながら、健側(元気な足)を前に出す。
片松葉歩行 | 松葉杖1本での歩き方〈骨がかなりついてきた回復期などに適用されます〉
1. 健側(元気な足)の手に松葉杖を持ち、患側(痛い足)と杖を同時に前に出す。
*健側(元気な足)の手で松葉杖を持つことでバランスが安定します。
2. 患側(痛い足)と松葉杖で体重を支えながら、健側(元気な足)を前に出す。
外出時には歩行を安定させ、ギプスを保護する専用のシューズなどを使うとよいでしょう。
靴の高さに合わせて、松葉杖の高さを調整することも重要です。
松葉杖との接触部分に痛みや違和感が出る場合は、包帯や薄手のタオルなどを巻いてクッション性を持たせることも有効です。


