「日本のストーマケア用品 今昔物語」では、国内におけるストーマ装具や関連するストーマケア用品の歴史についてお伝えしていきます。
第1回目は、日々のケアに欠かせないストーマ装具についてのお話です。
ストーマ装具が作られる前
現在販売されているストーマ装具の原型と言える「粘着式ストーマ装具※1」が、世界で初めて開発されたのが1950年代半ばと言われています。
一方、日本国内でストーマ装具が開発されたのは今からちょうど60年前、1965年(昭和40年)のことです。
それまで日本では、ビニール袋をベルトで固定して使用する「ベルト式装具」が使われることもありましたが、ストーマをオムツやガーゼで覆ったり、お椀状のものを被せて排泄物を受け止めるというようなケアがほとんどだったそうです。
そのため、排泄物のもれやにおいのもれ、排泄物が皮膚に付着することでの皮膚トラブルなどと常に隣り合わせで、外出もままならない状態だったそうです。
※1:排泄物を溜める袋を粘着剤で腹部に固定して使用するストーマ装具
研究所で開発されたストーマ用パック
そのような時代に国産初の粘着式ストーマ装具として開発されたのが、〈ラパック〉です。
開発したのは、有限会社東京衛材研究所(現:アルケア株式会社)で、当時の社名の一部になっている「研究所(ラボラトリー)で開発されたストーマ用パック」という意味で、〈ラパック〉と名づけられました。
ビニール袋を粘着テープで腹部に貼り付けるため、オムツやガーゼと違ってしっかりと固定ができるようになりました。また、当時はまだ防臭性のない袋でしたが、オムツやガーゼに比べてにおいの心配が少なくなりました。
〈ラパック〉は、ビニール袋と両面粘着テープを貼り合わせただけのとてもシンプルなつくりでしたが、当時としては画期的なことであり、〈ラパック〉が発売された1965年8月15日は、その後の日本のストーマリハビリテーションの歴史にとって記念すべき1日と言えるのではないでしょうか。
その後、〈ラパック〉は1998年に販売中止になりましたが、品種拡大として1990年に発売された防臭タイプの〈ラパック・スーパー〉は今も販売されており、〈ラパックシリーズ〉として60年のロングライフ商品になっています。