市村賞は、科学技術の進歩や産業の発展に成果をあげ、産業分野あるいは学術分野の進展に貢献した個人またはグループを表彰するもので、今回アルケアが受賞した「市村産業賞 貢献賞」は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者を対象としています。
アルケアは今後も、患者さんに寄り添う医療を実現するために、人と医療をつなぐインターフェース技術を軸に独創性のある新技術を融合させることで、医療用として高水準な要求事項に応え、医療機関や在宅ケアなどの療養の現場で幅広くご使用いただける多様な製品・サービスを開発してまいります。
ニュースリリース
2025年5月28日
薄型ハイドロコロイドの開発技術が「市村産業賞 貢献賞」を受賞
~オストメイト向けのストーマ用装具固定テープとして実用化~
アルケア株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役社長:伊藤 克己、以下「アルケア」)は、第57回 市村産業賞(主催:公益財団法人市村清新技術財団)において、オストメイト※1向けストーマ用装具固定テープに採用している、薄型ハイドロコロイドの開発技術が「貢献賞」を受賞したことをお知らせいたします。

※1 さまざまな病気や事故などにより、お腹に排泄のための「ストーマ(人工肛門・ 人工膀胱)」を造設した人
開発背景
本受賞の対象となった技術は、オストメイトの日常生活での課題を解決し、QOL(生活の質)を向上させることを目的として開発しました。オストメイトは国内に約23万人、全世界で250〜300万人いると推定されており、年々増加傾向にあります。
オストメイトは、ストーマ装具の交換時を除き、入浴や就寝時などを含め常にお腹にストーマ装具を装着する必要があり、日常生活においてさまざまな困りごとが発生しています。例えば、第9回オストメイト生活実態基本調査報告書※2によると、オストメイトが生活上で抱えている問題や悩み事の第3位に「ストーマ周囲皮膚のただれや痒み」があります。原因は、排泄物の付着や装具の着脱、不適切なスキンケアなどさまざまですが、一因にストーマ装具の面板(腹部に直接貼付する部分)外周部を固定するテープの使用によるトラブルもありました。
オストミーケアの製品企画において、オストメイトと医療関係者とコミュニケーションを進めるなかで、「排泄物漏れの予防策」や「運動などアクティブなシーンでのフィット感が欲しい」などストーマ用装具固定テープに関するニーズはあるものの、皮膚トラブルへの懸念から使用に対する課題感があると捉えました。ニーズを実現するための課題を解決し、「できる限り皮膚にやさしく、オストメイトご本人やケアをする医療関係者の双方が求めるストーマ用装具固定テープ」の開発に至りました。
※2 出典:オストメイトの生活と福祉(令和4年11月) 生活上で抱えている問題や悩み事 1位老齢化でストーマ管理ができなくなる 54.7% 2位災害時のストーマ装具の補給や自己管理 41.5% 3位ストーマ周囲皮膚のただれや痒み 36.8% 4位ストーマの便(尿)や臭いの漏れ 34.9% 5位病気の再発・再燃・転移 33.7%(N=3,930・複数回答)
開発技術
キーマテリアルとして、粘着剤に重合開始剤が側鎖にあるペンダント型紫外線硬化ポリマー(ホットメルト)を選定し、皮膚保護剤の吸水性向上と皮膚に対する粘着力の向上を目的に、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)とセラミドを配合しました(図1)。また、これらの材料を薄膜塗工もしくはスプレー塗工(図2)することで、厚さ100マイクロメートル以下の新規薄型ハイドロコロイド粘着剤を開発しました。高い配合自由度による機能性付与・薄膜化の両立により、透湿性・吸水性・伸長性を併せ持つ薄型ハイドロコロイドを開発することができました。本技術を応用し、皮膚にやさしいオストメイト向けストーマ用装具固定テープとして実用化しています(図3)。
さらに本技術は、医療用粘着テープ、創傷被覆材、テーピングテープ等の皮膚粘着製品全般への波及効果が期待できます。
本技術は、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」および公益財団法人東京都中小企業振興公社の「新製品・新技術開発助成事業」において得られた成果を一部活用しています

受賞概要
受賞テーマ |
薄型ハイドロコロイドの開発技術 |
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受賞者 |
医工学研究所 商品開発部 オストミーケアグループ |
奥山 亘 |
医工学研究所 商品開発部 オストミーケアグループ |
加藤 大智 |
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千葉工場 工程設計部 1課 |
松井 美沙子 |
受賞技術が採用されている商品
ストーマ用装具固定テープ〈メクレガード®テープ〉
規格 | 1函入数 | メーカー希望小売価格(本体価格) |
3cm×13cm | 15枚 | ¥1,650(¥1,500) |

アルケア株式会社について
1953年に国産初の石膏ギプス包帯「スピードギプス」の開発・製造に成功し、1955年に創業しました。ケアをする人・ケアを受ける人の双方にとって「親切な製品をつくる」という創業当時の想いはそのままに、現在は予防から社会復帰にいたるまで、ケアをプロセス視点で捉え、整形外科領域、褥瘡・創傷領域、ストーマ領域、看護領域の4つの専門領域で事業を展開しています。「ケアすることの可能性をもっと豊かに。ケアを受けることをもっと前向きに。」アルケアは、そんな明日の形を見据えて、磨きぬいた製品や情報、サービスを社会の隅々にまで広げてゆきます。
【報道関係者の皆さまのお問い合わせ先】
アルケア株式会社 総務広報部 広報課 E-mail : pr@alcare.co.jp
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コールセンター 電話番号:0120-770-863
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